手術をしなければならないフィラリア症
この1週間具合が悪いという犬が久米島から来院した。
元気食欲なく、おしっこが赤っぽいという。
外飼いということで、フィラリアを調べてみると強陽性で、心音に雑音があった。
腎臓、肝臓の酵素活性値も軒並み上昇している。
エコーで確認してみると、
心臓の右側が拡大して、虫体が心房ー心室間を行ったり来たりしている。
向かって左側が心臓の右で、上が心臓の下(心尖)、胸骨に接触する部分。
「二の字」みたいに見えるのが超音波で輪切りにされて映る虫体。
犬に貧血を起こすバベシアという原虫も陽性で、正常の半分くらいの貧血度合
いである。バベシアはマダニが媒介するので、ただ単に皮膚にダニが付いて気持
ち悪いとか、機械的に貧血を起こすだけでなく、ひとのマラリアのように赤血球に
くっついて、寿命が短くなった赤血球と勘違いされて処理されることによって、貧血
を起こし、持続感染していく、という命に関わるおそろしい病気である。
ふだんからマダニ寄生しないようにスポット剤など使用して予防することをここ
ろがけたい。
午後に時間をとって緊急手術となった。用意周到に輸血しながらの手術となる
外頚静脈という頚の静脈から軟らかいカンシをテレビ型レントゲンで確認しなが
ら心臓まで進めて虫を掴んでくる。慣れてくると虫を掴んでいる感覚が手元の
ハンドルを握る手に感じとれる。3回くらいの出し入れで、おおよそ心臓内にいた
虫は回収できた。
このあとバベシアも寄生しているので厳しい術後管理が予想されるが、麻酔覚
醒はよかった。
手術直後でだるそうであるが、虫がいなくなったので、すっきり?しているだろ
うか。
昨年の夏に最後の大量寄生があり、それが6ヶ月で成虫になって、冬のいま
ごろにこの手術をすることが多い。
水と木の豊富な久米島は媒介するヤブ蚊が多く、フィラリア虫体は沖縄本島
の約2倍のスピードで寄生していく感覚がある。
このサブローくんも5年前までは月1回の錠剤投与で予防していたのだが。
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