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2009年10月21日 (水)

ネコも手すりから落ちる?

 集合住宅で飼育するネコがよく高い階から転落する。

 

 つい先日のネコは、5階から落ちても鼻血が出ただけで軽くすんだ、ということも

あったが、今回のネコちゃんは2階からの転落だが、肘周辺の複雑骨折を受傷し

て、かなり深刻なようすだ。

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毛刈後に、少し押してみると皮膚損傷部位から漿液が流出してきた。中と外がつ

ながっている(開放)合図である。 全体はすごい腫れ。

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モンテジア骨折という、前腕骨近位の骨折と、肘の脱臼が併発していた。

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尺骨は骨片がありそうに見える。

これはたいへんやっかいな骨折・脱臼だ。

 

 お預かりしたのは昨日だが、全身状態の安定を確認して今日手術となったのだ

けれども、今日は定休の休診日であった。スタッフを休ませるのも自分の仕事だ

し。 しかし、痛みが強いので明日まではおけないし。

  

 ひとりで粛々とやっていこう、とすこし気合をいれた。

 

 思えば22年前の開業当初はひとりだったし、いまでもひとりで診療する離島

出張は初心に立ち返るトレーニングの場ともいえるのかな。

 

 さて、周囲の準備を万端整えて、もちろんPRPの準備もして麻酔開始する。

 全身麻酔に、末梢神経伝達麻酔(ヒジの直上の神経周囲に浸潤)も併用した。

なにしろヒジ・ヒザはとても痛い箇所である。このネコちゃんも受傷直後より痛みで

食欲がまったくない。

 

 いつもどおりの整復、PRP注入、キャスティングの計画だが、ふだんあまりない

骨折・脱臼なのでうまくいきますように、と祈りながらの作業だった。

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軟部組織の腫れがじゃまして、なかなか整復位までもっていけなかったが、

ヒジ関節を曲げ伸ばししたり、前腕を回外・回内させながら、なんとか復位でき

た。

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 多発性骨折している部分にノンゲルPRPを注入してキャスティングをしたが、

再脱臼防止で矯正的キャスティングしたためにギプスに独特の陰影ができてい

る。

091021_030_2

 

 

内方・回内方向へと変位していた肢先も正常肢勢となってアラインメントが整

た。

 脇を固める意味で、この場合肩までバンデーシングしている。

 

 以前に読んだ渡辺淳一さんの本に整形外科出身の筆者ならではの、肢持ち

の話があったのを思い出した。新米整形外科医は重たい肢を持ちながら、先輩

外科医の技術を盗み見するような話だったか。

 

 今日のネコちゃんも肢先を持ってもらうだけでもキャスティングその他がやりや

かったはずなので、いつも周りで働いてくれる看護士さんたちに感謝する気

持ちに立ち戻ることができた。

 

 午後には食欲が出てくるだろうから、かつおぶしでも買ってきてあげよう。

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用事を済ませて、夕方近くにいつものダートに来てみたが、台風20号の影響か

今にも降りそうな気配だったけど、2時間近くのライディングの間、なんとかもっ

てくれた。 

 この赤土で降られると、帰り道が果てしなく遠くなってしまうんだ。

夕方の当番の看護士さんが、手術したネコちゃん、ゴハン食べてくれましたよ

と報告してくれた。 よかったね。

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