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2009年10月18日 (日)

犬も歩けば棒に当たる

 イヌに剪断性損傷という特殊な足関節の損傷がある。

 これも獣医さん泣かせあり、皮膚・皮下組織・腱・靱帯・関節包・軟骨・骨、と

複合的な組織損傷を伴う、とてもやっかいな損傷である。

 

 おもに、交通事故の際に、路面で足関節(くるぶし)の内側面をひきづられながら

削れてしまうことで、起こることが多い。不潔創ゆえに感染も起こりやすい。

 

 放すつもりはなくても、門や庭の垣根からの脱走などで、外を彷徨しているう

に、交通事故や中毒物質の誤飲や感染症にかかることを多く経験する。

 なかにはそれが致命的な結果をもたらすこともあるので、充分注意したいもの

だ。

 

外を歩いているうちに災難が降りかかるのは諺どおり、ということになる。

 

 今回の症例のハナちゃん・6歳は、普段から垣根を乗り越えて外へ出るので

危険ということで、飼い主さんがわざわざ垣根を高く作り変えたのに、それをさ

らに乗り越えようとして、隙間に肢を挟んで受傷したそうだ。

 

 以前は教科書どおり、脛骨と距骨に螺子を打って、ナイロン糸で人工靱帯を

作成する、などの手術をしていたが、数年前より、できるだけ現存の組織を引き

せて、縫合、その後感染のないことを確認してから、キャスティング(ギプス固

定)という方法で治してきた。

 

 その後、これに加えて、PRP(多血小板血漿)を適用することによって初期の感

染に強く、かつ後に関節包や靱帯の再生力が強くなる感触を得ていて、いまは、

採血→PRP作成→洗浄・デブライドメント→できるだけの縫合(血行損なわない程

度に)→PRP挿入→皮膚縫合→閉鎖、感染マイナス確認後にキャスティング。

 

 この方法で、負重に耐えられる、良好な歩様が保てている。

 残存する周囲組織からそれぞれの組織が増生するのをPRPのサイトカインが

助けてくれているのだろう。

ハナちゃんの受傷直後

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脛骨・距骨まで見えている、痛ましいケガ

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右が内側。関節腔が空いて、骨片が両側で飛んでいるのが見える。

 ちなみにこのハナちゃんは2年前にフィラリア成虫駆除をおこなっている子で、

このジャンプ力についてだけは、すばらしい体力の回復、といえるだろう。

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PRPをたっぷりと充填している

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腱・靱帯・骨が再生しますようにとのこころづもりで充分量充填した。

 

 昨日、1週間目で創は乾燥して感染徴候なし、負重もしているが、他動により

外方へくの字に変形する傾向あり。キャスティング(ギプス固定)をした(無麻

酔)。 キャスティングするとダッシュで処置室を出て行った、ハナちゃんであっ

た。

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 PCに残っている、ホサナの別症例。やはり脛骨・距骨が見えて、切れた白い

靱帯もなまなましい。

090825_735

この症例にもたっぷりのPRPを挿入充填して、後に縫合。

 

 PRPを適用するようになってから後に感染した症例は幸いまだないので、

バフィーコートまで含ませるゲルによって、より感染防御が働いている、と考え

ても良いのかもしれない。

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秋雨前線、一休み中。   万座毛の南方の海岸にて

 

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