腹腔内陰睾
今日、火曜日は久しぶりにホサナ動物病院に診察にやってきた。
朝いちばんにイミトサイド注射液によるフィラリア成虫駆除があった。
この犬は、「石の上にも三年」の巨大膀胱結石を取った子だ。その後併用療法の
内服により心拍数の減数と呼吸状態の改善を見て、本日ようやく第一回目の駆
除にこぎつけた。同時に結石摘出時の抜糸も合わせ行う。
このあと2週間後の検診を経て、4週間後に3時間間隔で2回の注射によって、
いま肺動脈内に散らばって存在する成虫の100%が駆除できる。
ちなみにこの注射薬は、USAでは年間○十万本というオーダーで使用され
る。日本では○千本というオーダーであり、ケタが違いすぎる。人口、犬の数、
蚊の生息数など、どんなに割り引いても日本での駆除が少なすぎる。これに
は、さまざまな要因があるが、日本の獣医師が使用を控える傾向にある、のが
最大の要因かと思われる。
ということは最終救命手段の血管内駆除の選択ができずに、どうにかなって
いく患者が存在する、ということでもあるのだが。
消化管内寄生虫と違って、血管内にいる虫なので、駆除によって死んだ虫が出
て行く場所がなくて、血管内先端で詰まり、肺全体でそれが起こるので、治療に伴
うよろしくない併発症が出ることが多いのである。
そこで、心臓・呼吸器系を整える内服を治療期間中併用して、4週間間隔で2段
階・3回以上の注射という方法をとることによって、有害事象を少なくしている。
(このことはAmerican Heartworm Society というホームページで推奨されている
アメリカでの標準治療であって、数年毎に更新されている。)
この間もっとも大切なのは安静を維持することである。治療の成功は飼い主さん
がいかにこれを守ってくださるかにかかっている、と言ってもいいほどだ。
今日のジェ○ーちゃんは、真剣に耳を傾けてくれていた飼い主さんのようすからして
安心していいだろう。
ごくまれに、どうしたはずみか末梢の肺動脈に散らばって寄生していた虫が急
に肺動脈の心臓に近い太い所に集まってきたり、心臓内に入り込んでしまうとき
がある。このときには下の写真のように緊急手術で虫を取らなければならない。
外頚静脈から柔らかいカンシを心臓内まで進めて、虫を回収してくる。
ぎっしりで、出てこれないくらいにダンゴ状になっていることがある。
メス虫は30センチを超える長さ 1匹の虫の寿命は5-7年 これが年々積もり
積もっていき、肺動脈内でうごめき続けているので、犬はたまったものではない
月に一度予防薬を飲ませるなどの方法で、予防できる病気なので是非予防
してあげてほしい。
昼はミニチュア・ダックス2歳の去勢手術があった。
譲り受けた新しい飼い主さんが依頼してきたもので、見ると「タマ」が一つしか
なくて、もう一つはよくあるソケイ部、にもなくて、この場合は腹腔内にあると判
断して、メスの避妊手術のように開腹手術となる。
今陰嚢にあるのが左右どちらの精巣なのかを確認(上方に移動させることで
判明)することで、陰睾がどちらかを決定しておくと手術がしやすい。
下腹部を小切開して、膀胱の傍にあるであろう、潜在精巣を子宮つり出し鈎で
ひっかけて腹腔外に出してその後は一般的な去勢手術と同様の手術となる。
お腹のなかにある精巣ほどがんになりやすい。老齢で症状が出てから危険を
ともなう手術をするより、若いうちに予防的手術を受けてほしいものだ。
PCにあった別症例 小さい孔から摘出可能だ。
2週連続で、定休日出勤して手術していたけれど、明日の定休休診日は
どうなりますやら。
« 両前肢骨折のチャ○ちゃん その23日後 | トップページ | ペットの高齢化 »
「ペット」カテゴリの記事
- 股関節脱臼 ローズちゃんの場合(2019.01.17)
- 膀胱結石 ジョシ―ちゃんの場合(2018.12.15)
- 縫い針を飲み込んだパティちゃん(2018.11.29)
- フィラリア吊りだし手術 モーギーちゃんの場合(2018.11.09)
- 口腔内悪性黒色腫 イブちゃんの場合(2018.10.23)
コメント