PRP(多血小板血漿)のこと
さきのブログについて問い合わせが続いたため、ここでPRPについて詳しく
紹介したい。
USAのRobert E Marxというマイアミ大学医学部教授 (口腔顎顔面専門
医)が臨床応用されたあたりが、この技術の始まりのようである。
2年前に購入したこの本には「PRP作成後、ゲル化前なら室温で8時間保存
可能」 (動物医療ではみられない手術時間の長さを想像させるが) などなど、
貴重な研究の積み重ねの情報が満載である。
PRPについてさらに勉強を深めたい方にはお薦めの本である。
「多血小板血漿(PRP)の口腔への応用」 クインテッセンス出版(株)
2006.2.10 発行 第1版 第1刷
わたしは最初、やはりCAP誌での再生医療シリーズの連載で、岸上義弘先生
紹介のPRPの記事から強く興味を持ち始めて、数編の国内歯学部教授の論文
を読み、上のマルクス先生の本を読んでから、自身で臨床応用を始めた。
CAP No.213 右下の写真が岸上義弘先生だ。京都大学で再生医療を研究
され、自身の病院で臨床応用してこられて、その成果を後進に伝道されている。
この中にその意義や方法について詳しく書かれているのだが、一部抜粋させてい
ただくと。
7種類のサイトカインが血小板に含まれている。組織が損傷した時に出血する
が、いち早く集まる血小板はただ単に止血の役割をするだけでなくて、次になす
べき損傷の治癒への尖兵隊でもあるのだ。
この「7色のサイトカイン」を局所に適用してサイトカインカスケードをフル回転さ
せ、治癒をよりたしかに、より早くしようという狙いだ。
実際の作成手順が、これだ。
以下、わたしの施設で行っている方法を紹介すると。
手術中手が離せない獣医に代わって看護士さんたちに作成していただけるように
マニュアルを作っている。
投与される本人(犬・猫)から採血する。 自家移植というわけだ。
ただし、エイズ罹患のネコちゃんの難治創傷治療などには健康な献血ネコの
血液から作成したPRPがよいようだ。 (わたしの治験から エイズ罹患ネコ
PRPはなかなかゲル化せず、できても見るからに弱弱しい感じで、適用しても
治癒が進まない。血小板に機能的な問題が起こっているのだろうか。)
ガラスシャーレ 採血管(ACD-A液入り) 塩化カルシウム
これ以外は4000回転以下の遠心分離機があれば院内で作業可能なので
日本のほとんどの動物病院で可能、ということになる。
1800回転 8分間の遠心後 分離された多血小板血漿(右採血管内の上澄)
わたしは、上澄みと血球の間のバフィーコートも吸い取るようにしている。
上澄みに対して規定量の塩化カルシウムを混和してガラスシャーレ上に展開
ゲル化を待って、ガーゼ上に展開する。創に合わせた形状にすることもできる。
院内でよく実施する方法で、ゲル化直前に注射器から骨折線や皮下損傷部
位に注入することがある。このときはガラスシャーレは使用せずに、注射器内に
て塩化カルシウムと反応させたのちに局所に注射投与している。
αー顆粒から脱顆粒してサイトカインが放出されるためには、凝固過程におい
て活発化される、というのが原則ではあるが。
尺骨の安定する骨折線にPRPゲル化前のものを注入し、その後キャスティン
グした。
骨盤の多発性骨折でも、四角の形状が保たれて安定する骨折には、長い針
を使用してこの方法を適用、良好に治癒した例もある。
また、難治性の爪周囲炎の症例に同様に局所適用したところ、その後劇的に
治癒に至った例もある。
そのうちに軟部・硬部組織それぞれについての治療例をまとめていきたいも
のだ。
ほとんど米軍演習場スレスレのところ?
ボーダーがあいまいなところもあるようだ。
アメリカ人が立てた小さい案内板にSpiderなんやら(朽ちて読めない)と書いて
いて、最初意味がわからなかったが、ここを通って出てくると、ヒトもバイクも
くもの巣だらけとなる、という意味があとからわかった。
なんだか、とても痒くなるので困るのだけれど、すぐにまた行きたくなるほうが
もっと困るんだ。
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