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2009年8月31日 (月)

現代飼犬悪食奇譚

 また、内視鏡の出番となった。

 犬は異物誤飲が多い。

 今回はいつもよくある釣り針事件でなく、縫い針を飲み込んだ犬だ。

胃の広い空間に糸がついたままの長さ4-5cmの縫い針を発見。回収時に針の

先端が胸部の食道をキズつけないように針の頭部を把持して取り出す。飼い主さ

んとともにホッとする瞬間だ。

 

 釣り針には餌が付いているためにパクッと食べて、あわてて飼い主さんが引っ

張る、するとイヌが釣れた!?ようにどこかの粘膜に釣り針が食い込み、釣り糸を

垂らしたまま海岸から病院へ直行ということになる。糸が口の外に存在する場合

はそれこそこれを糸口に、あらたに縫合糸を足してチューブを通し、針まで到達し

たなら、コンッと返しの部分を粘膜から外すようにチューブを押してゆっくりと回収

してくると、特殊な器具がなくてもうまくいく場合がある。もちろん麻酔下ではある

が。

 口から垂れ下がっているはずの糸もなく、レントゲン検査で釣り針が胃を通過し

て腸内へ進入していることがある。このときには全身状態の悪化がなければその

まま通過、排泄するのを待つ場合がある。これまで何例か無処置で自力排泄に

いたった症例を経験している。

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イヌは本来集団生活で狩をし、飢餓の時間が長いのと、順位付けがあるのとで、

獲物にありつけたときにはガツガツといわゆるイヌ食いをする。現代のイヌもその

DNAを当然ひきついでいる。

中毒事件もネコよりイヌで多く、重篤になることも多く経験する。

 

 これまで回収してきた異物。

使用済みタンポン。同ナプキン。線維のダマダマ。髪束ね用ゴム。ガラス片。ボタ

ン。スーパーボール。キャンディー個別包装の袋20数枚。焼き鳥串。ホネッコの

かたまり。マンゴーの種などなど。

マンゴーの種などオキナワらしくていい、などと冗談もいえないくらい大きくて、お

まけにいくつも飲み込んでいる場合もあり、けっこう回収がたいへんである。

   

 なんでもパクッと食べてしまう犬の最大の予防法は、相手ができない時はケージ

飼いにすることであろう。モノによっては命に関わる場合もあるので、多少不自由

に感じてもそうするほうが長く幸せにくらしていけるはずである。本来狭いところ、

外界から遮蔽されているところを寝場所にしている動物なので、このほうがイヌの

精神は落ち着く。ソファーからの落下による骨折事故等の防止にもなる。なれるま

で出せ出せと吠えるだろうが、声をかけないでケージだけ地震が来たかのように

揺らす、ということを繰り返しているうちに吠えなくなるものだ。

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内視鏡は異物回収だけでなく、病変観察や組織診断のための組織採取もできる

便利ツールだ。

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