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2009年8月12日 (水)

フィラリア症のこと

犬のフィラリア症について

 

 獣医学科卒業時の同級生約140名が全国に散らばって活躍している。そのう

ちの半数近くが小動物臨床にたずさわっているだろうか。この年になると、時折

学会で顔を会わせる面々はだいたいいつも同じ顔ぶれが多い。私自身もここの

ところ家族の都合で外に出れないことが多くて、いよいよヤツもひきこもりがち

になってきたか、と噂されていることだろう。

 

 さて、日本全国に散らばっている同級生の誰もが経験している病気が犬のフ

ィラリア症であり、たまに会う面々とその地域の感染率や治療法についての情

報が飛び交うことになる。都市部ではさすがに予防意識が高いのと室内飼いが

多いためかそんな病気もう見ないよ、と過去の病気になりつつある地域も出て

きたようだ。

  

 しかし九州、沖縄ではまだまだ後進地域であり、ふつうに見られる病気であ

る。外飼いで予防なしのつわものの飼い主さんが多いのである。予防を知らな

かった、というのであればわれわれ獣医師の力不足、公報不足と恥じ入り、謹

んであなたの耳にまで届かなかったわれわれ獣医側の怠慢であろうか、と反省

するわけである。

 

 ところが前の犬も同病で亡くし、今回、元気食欲廃絶し呼吸速迫している犬も

フィラリア成虫抗原強陽性という、なんとも理解に苦しむ飼い主さんも実際おら

れるのである。でもこのときも飼い主さんは余計にこころを痛めているものであ

るから充分に説明し、しっかりと治療していくことになるのだけれど。

 

 治療はイミトサイド注射液という低毒性化した砒素剤を使用する。能書どおり

使用するとよからぬ生体反応が起こることが多いために2段階3回注射のよう

に分割して投与する。この間、内服薬による支持療法を併用していくことで、よ

り治療効果を高めていく、ということをここ10年近く実施して成果を得て、10年

前にとうに天に召さていたであろう犬も時折病院に元気な姿を見せに来る、と

いうこともおこる。

 

 ときどき急性症タイプといって本来の寄生部位である肺動脈に散らばって存

在する虫体がなんのはずみか、心臓の近くに集まってしまい、重篤な循環不全

を来たす症候群がある。このときにはほとんどの場合、頚の静脈からやわらか

い器具を挿入して心臓やその近くの大静脈にいる虫体をモニターを見ながら回

収する、というなにか気持ちのよろしくない手術が必要となる。

 

 いずれにしても予防できる病気なのだから、愛犬と家族の幸せのために予防

をしてほしい。月に一回予防薬を投与することにより本病を媒介する蚊にいくら

刺されても心臓に到達する前の小さい虫の段階で駆除する、ということを繰り返

していく方法である。

 

 半年間有効の注射による予防薬もあり、当院でも国内販売と同時に使用し

て、飼い主さんに好評を得ている。

 

 いったん心臓に到達した虫は長さ30センチにもなり、5年から7年間も肺動脈

内で生きてうごめいていて、それが毎夏蓄積されていくので、その間に肺動脈

硬化や塞栓それに伴う水腫、炎症などが起きていずれ全身循環不全状態を来

たして、つらい病態になっていくという、とてもかわいそうな病気なのである。

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イミトサイド注射液と内科支持療法併用療法の投与前  痩せて腹水が溜まっ

ている

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投与後  腹水が取れ、すこしふっくらしてきたし元気になった

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手術により回収された虫体 (上の犬と別症例)

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伸ばすとこんなに長い虫

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