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2009年8月15日 (土)

避妊・去勢手術の重要性

8月15日(土)

 動物を診療する中で、連日のように心を痛めていることがある。

 それは避妊・去勢手術を若いうちにしていなかったがために、老齢期になって

発病する病気で苦しむ動物を見ることである。

 

 メスでは乳がんや卵巣・子宮の病気、そしてオスならば精巣・前立腺の病気や

それに伴う近接の脊椎・椎間板の炎症、肛門周囲のがんや会陰ヘルニアとい

って内臓が尾の付け根のそばあたりから飛び出すという困った病気、などがあ

る。

 

 これらの治療にはいずれも老齢の動物であることに加えて、病気のために弱

った身体に手術療法を施さなければ救命できない、あるいはクォリティーオブラ

イフの低下を防ぐためにやむをえず手術を施すということを選択せざるをえなく

なることが多い。若い時に手術していれば、、、、とため息をつきながらの大手

術、となることがある。

 

 飼い主さんに避妊・去勢手術をしない理由を聞くと、子供が欲しかったがタイミ

ングを失っているままに老齢となってしまった、手術させるのは怖かった、自然

に任せようと思った、などなどそれなりの理由をきくことができるものである。

 しかし動物はヒトと違う動物である。卵巣・精巣を除去したがために生じるヒト

性ホルモン脱落に関連する疾病はまったくといっていいくらい動物では問題

ならない。

  

 それと自然に任せる、といってもヒトに飼われていることそのものが不自然

で、それは食事内容(本来肉食)とか絶食(飢餓)時間、集団行動などの社会的

な行動、それに伴う性行動などなど本来野生であるべき姿からおおいにかけ離

れた不自然な飼育方法を余儀なくされている状況で、「繁殖だけ自然に」という

のが「不自然」だと思うし、そのあたりに老齢期にいたって重大な病気が生じる

要因が含まれているのであろうとも思う。

 

 なお、ヒトと違って高齢になるほどに乳がん・卵巣子宮の病気の発症リスクが

高まる。15歳、16歳の犬の手術もやむなく引き受ける、という場面も出てくる

のだ。これはヒトと違って、はっきりした更年期がなく、身体の中ではいつまでも

卵巣からホルモン分泌が続いているからという種差によるもので、表面上周期

が長くなったり、出血量が減少しても病気のリスクは年々高まると考えて良い。

 

 子供さんたちへの情操教育という側面での繁殖もたしかに大切だろうけど、も

しそう計画しても若いうちに繁殖を終了させて早めに避妊・去勢手術をすること

を、そして計画しないものについてはできるだけ早期(適期)の手術を、ほぼ毎

日のように老齢動物の苦しみを目の当たりにしている立場から強く訴えたい。

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乳がんの手術風景

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子宮蓄膿症の術中写真

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精巣腫瘍の摘出手術 健康側の約10倍大に腫れていた

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犬肛門周囲腺癌 術前所見 

P1000032

友人からいただいた夕景

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